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薄暮都市

同人・女性向けの話題専用のブログ ジャンルはよろず。遊戯王・DFF・バサラなど。 ときどき、アイマスや東方などの話も混じりますのでご了承の程を。

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  • 11/15/09:44

《花束を君に》 (亮とエドのSS) 


 昔、しあわせになんてなれなくたって生きていればいい、と言ったら、強い口調で叱られたことがあった。
 知らない相手だった。誰だかわからないが大人だったのは確かだった。テレビの人だったのかな、おぼえていない。僕はたしかまだ12か3かそこらで、プロになってようやくひとり立ちが出来るかできないかっていうころだった。

「幸せをねがわない人間なんていない。自分をごまかすな」

 そんな言葉を聞きながら、僕は自分のうかつな発言を心から後悔していた。でも、相手の言うことをうけいれてるつもりなんて一ミリだってなかった。みるみるうちに自分の目に写る感情が、絶対零度の冷たさにまで冷え込んで行くのを感じて、僕は素直なふりをしてうつむいて、前髪で表情を隠した。

 しあわせが生きる価値だなんて思っていて、どうして、あの頃の僕が生きられた?

 生きるため、強さが欲しかった。
 自分自身が生き延びるため、必死になってもがいているなかで、自分の幸せなんて考えている余裕は無かった。明日、くたばるかもしれない。誰もかもから見捨てられて路地裏で襤褸みたいになっているかもしれない。そんな風に思っていて、そんな風に生きているのは幸福なんかじゃないと知っていて、それでも僕は生きたかった。死ぬのなんてごめんだった。そのためにだったら、復讐だって、運命だって、なんだって掴んだ。掴み取った剣がガラスで出来ていて、その刃が僕の手を骨まで切り裂いたとしても、戦うすべを失うということが、僕が想像しうる中でもっとも恐ろしい事態だった。

 あのころ、幸せそうな人間を見ると、どうしてあんなにいらついていたんだろう。僕はあいつのことを思う様に引き裂いてやりたかったけれど、今思えばそれは憎しみなんかじゃなかった。嫉妬、というほどのかたちすらできていない、ただの、子どものわがままのようなものだった。
 強い人間には、幸せなんて言葉を忘れるくらい、生きることだけに必死になってほしかった。そうして、必死になって生まれてきたというさだめに牙を立てて、血みどろで戦う姿をみせてほしかった。僕は、同伴者がほしかった。一緒になって生きることと戦ってくれる朋が。

 ―――でも、今はもう、僕は戦わなくても生きて行くことができるみたいだ。

 この牙をどうしよう? この爪をどうしよう? 必死になって自分が生きることそのものと格闘してきたものだから、他の生き方がよく分からない。でも、足を止めれば周りのものが目に入ってくる。戦うべき敵だったはずのすべてのものが今ではみんな美しくみえて、少なからず僕を戸惑わせている。
 こんな手紙はばかげてるって? 残念ながら、僕もまったく同じ意見さ。だが、実際そのとおりなんだから仕方がない。これからは他の生き方をしなければいけないんだったら、それを探していくまでさ。

 亮、キミだったら、なんとなく僕の言っている意味がわかるだろう。とりあえず回復おめでとう。斎王からの伝言は一つだけ、「無理をせず、堅実に歩め」だそうだ。今は異能は無いにしたって、長い間人の悩みを聞いて食べてきた人間のことばだ。それなりの妥当さはあるんじゃないかと思う。
 この花がきれいに見えたなら、それは、キミがこれからは今までと別の生き方をしなければいけないという意味だ。というわけで、この花束を贈るよ。せいぜい悩んでみるがいい。時間はたぶん、まだ、いくらでもある。
 そうして、ついでがあるんだったら、この花束の中の一輪でも、十代に渡してやってくれ――― 「きれいだな」とあいつが言ってくれることを、僕は心から祈っている。

 《我が親愛なる友、丸藤亮へ エド・フェニックスより》


********

亮エドになんなかった…orz
タイトルは《アルジャーノンに花束を》の初邦訳かなんかのときのタイトル。エヴァじゃないよ(笑

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