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薄暮都市

同人・女性向けの話題専用のブログ ジャンルはよろず。遊戯王・DFF・バサラなど。 ときどき、アイマスや東方などの話も混じりますのでご了承の程を。

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  • 05/16/10:31

星くずをあげる【Moira話】



サンホラの【Moira】って聞けば聞くほど味が出てきますよね。ふしぎ!
実は初めて聞いたとき「ごちゃごちゃしててよくわからない…」と思ったのですが、二回、三回と聞くたびにいろんな想像が膨らみ、キャラへの愛しさが増してくるという話。でも未だに登場人物が把握しきれない… 特にアルカディアキャラの血縁関係が理解できない…orz
とりあえず聞くたびに何か愛が湧いて仕方が無いのがオリオンです。やんちゃ小僧で元気でくじけなくてちょっと生意気。奴隷市場というあたりから連想して、どうしてもドラクエⅤのヘンリーを思い出してしまいます。昔は甘やかされて生意気な王子様だったのが、奴隷生活を経て、決してくじけない心と強靭なユーモアを持ち合わせた青年へと成長するのですよ。
でも、ちゃんと国に帰り、弟に王位を譲って愛する人と結ばれたヘンリーと比べ、オリオンはどうやっても幸せにはなれなかった気がするのがなんともいえない。そもそも【Moira】のストーリー全体がギリシャ悲劇モチーフの運命悲劇なので、幸せになることなんてできないのがデフォルトなんですけれども。

えーとそもそもオリオンは何者なのかって話からはじまっちゃうのですよね。
彼に関しては奴隷時代にエレフと仲の良かった少年で長じてその後弓術の達人になる、そして後に忌み子として棄てられた王子だという噂まで立てられるのですが、ミーシャ殺害現場に居合わせる→父とも噂されたアルカディア王を射ろと星女神から弓を授けられる→王を暗殺→スコルピオスの手にかかり死亡 という流れか。
でもこの流れの中だとオリオンがどこの誰の子なのかがさっぱりわからない。「忌み子だといわれて棄てられた王子」ってのはエレミシャ双子だとして、オリオンはそもそも何処から沸いて出たのか?
仮にオリオンがアルカディア王の血統だとしたらエレミシャとレオンとは兄弟だということになりますが、そうなってるとオリオンが棄てられる理由ってもんが存在しない。
そうなるとエレミシャが実際の「忌み子」だというところをカモフラージュするために、棄てられた王子の代役として立てられた一般人? だと思うのが妥当なところでしょうか。

というか、そもそもオリオンは名前の原型から考えると、半神の英雄というギリシャ神話に頻出するカテゴリの人種だということにはなるんですよね。
実際にレオンティヌスに加えてエレミシャも「神の眷属」だといわれているんだし、そういう同じ種族カテゴリから代役に立てられたのがオリオン、と考えてもいい気がします。
神話だとオリオンは海神ポセイドンの息子のひとりだということになっており、アルテミス(アルテミシア?)の恋人になったせいでアポロンの姦計にあたり殺されてしまった、という人物だということになっている。さそり座とは隣接している関係で天敵関係にあるってことに。
ただMoiraに出てくるミーシャってのは月女神ではあるものの、大人しくて清純な性格は荒々しい処女女神であるアルテミスとは程遠い感じがします。むしろキャラ付けとして近いのはオリオンのほうじゃないか? という気もする。
そうなるとやっぱり、オリオンは運命の織物に横糸として編みこまれただけの一登場人物、ということになるのかなあ…

風の都を離れてより、結局オリオンはエレフと再会することは叶わなかったのですよね。
オリオンはミーシャのことを救う事はできなかったし、エレフはすべてが終わったときになってミーシャのところにたどり着いた。二人は結局すれ違いで大人になってからは出会ってない。(エレフのほうはオリオンの噂を聞いていた節はありますが)
でも星女神がオリオンを選んだのはやっぱりそこになんらかの意図があったんだろうし、神の命令には逆らいがたいといってもオリオンが弓を取ったのはやはり「愛する人のため」だったんじゃないかなーと思いたい。

長じて英雄としての才能を現し、弓の達人としてとうとう武術大会で優勝するまでになったオリオン。
時代の変遷のなかで自分の子を棄ててしまったことを悔いていたアルカディア王は、噂のなかで自分の子じゃないかと言われるオリオンのことを我が子のように可愛がるようになり、天涯孤独だったオリオンも老境のアルカディア王を慕うと同時に同情するようになる。
しかし、自分の立ち位置がエレミシャ双子の席を占めているだけだということを知るようになってから(オリオンは以外と目端が利きそうだから、それくらいの知恵は働かせるだろう)、自分の居場所は後にエレミシャが帰ってくる場所を護るために存在するのだと考えるように。
でも二人は帰ってこなかった。というか、ミーシャもエレフもお互いにお互いだけが「戻るべき場所」であって、そもそもアルカディアに戻ってくる気は毛頭無かった。
ミーシャの死後オリオンがアステリアの天啓を受け入れたのは、二重三重の意味があったりする。自分がアルカディアで怠惰に平和をむさぼり続けていたということへの代償、エレフがこのままでは実の父親と必ずや敵対するだろうと知ってエレフの重荷を背負おうと思ったということ、ミーシャの死を防げる位置にいながら何も出来なかった自分への罰、その他もろもろ。

個人的にはオリオンは生涯、明朗快活な少年だったと思いたいです。
そしてこの立ち位置だと、「あきらかにニセモノ」だと分かっていて王から寵愛を受けているオリオンに対してのレオンティヌスの複雑な気持ちもあるだろうなあと。
でも殿下は正々堂々として真っ直ぐすぎるお人なイメージがあるから、オリオンが何を思い何を感じていたかはお互いに理解不可能だろうなあと。





「弓がしなり
 はじけた焔、

 夜空を凍らせて

 りんと蒼く
 別れの歌を

 あなたを撃ち落とす…」


 口ずさみながら彼は、ゆっくりと弓を引いた。星屑のきらめき纏う弓が燐光をまとう。
 銀弦月さながらの星女神の弓が、熟練した射手の手に引かれ、見る間に満月の形へと引き絞られる。
 彼は笑った。金の髪の、女神の射手は。波頭の白をした頬を涙が伝った。オリオンはまっすぐに的を見据える。大理石のバルコニーに立つアルカディア王を。
 
 さようなら、欲深く罪深い人の王よ。
 これは女神の報いでもあり慈悲でもある。
 あなたが冥府へ赴いて後、英雄がこの地を戦火で焼き払うこととなるだろう。立ち上る煙を供物として、アルカディア全土が神々の手へと還されることになる。オレの出番はそしてここまで。

 でもね、おとうさん。

 オレはほんとうに、

 あなたのことを、


 ―――星女神の射手、金の髪のオリオンの物語。



 そもそもはじめから、親はいなかった。
 母親は彼を産み落としてしばらくして儚くなった。父親は誰だかわからなかった。
 
 だから誰に育てられることも無く育った彼のことを、故郷である小さな漁村の人々は、神の落とし子ではないかと噂していた。金色の髪をなびかせ、白い泡を蹴散らし浜辺を走るオリオンを。
 靴を履いたことなんて一度も無かった。子どものうちから誰よりも速く走れた。夜は疲れて浜辺で眠った。うちよせる波の音を子守唄に。

 オレにはたぶん、母さんとか父さんなんていない。
 兄弟とか姉妹とかも。

 だから、奴隷商人に捕まって売り飛ばされたときも、そこで過酷な日々を強いられたときも、オリオンひとりはどうしてという理由も無く、屈託も無く明るかった。
 もともと誰かに愛されることになんて慣れてない。金の髪をした明朗な少年に誰もが優しかったけれど、それと愛とは別のものだ。
 ぼんやりとオリオンは、未来の自分のことを思っていた。今はまだない、故郷というものについて。もしかしたら遠い未来に知ることになるかもしれない家族というものについて。

 そうして泣き虫なエレフ。
 オリオンにとって唯一、家族とか、故郷とかいうものについて、教えてくれたんだろうやつ。

 まだやわらかい子どもの肌が鞭痕に赤くはぜ、短い夜を泣きはらして過ごすたび、「帰りたい」とエレフは泣いた。
「とうさん、かあさん、どうしてるんだろう。帰りたいよ。ミーシャもいっしょに。家に帰りたい。森に、帰りたい…」
 昼間はエレフの泣き虫をからかって、冗談を言ったり逆にからかって怒らせたりしていた。でも夜中は別だった。夜の夢でまで我慢していられるほど、エレフは強いやつじゃなかった。
 夜になるたびオリオンは、たった一人の友だちと、抱き合って眠った。
 泣きじゃくる肩を抱き寄せ、銀と紫をした不思議な髪を一晩中でも撫でてやった。
 昼の涙は苦くて熱く、融けた鉛のような苦痛に満ちていた。でも、夜の涙は甘くやわらかく、舌先で感じるとほろ苦い香りをかすかに感じた。

 お父さんってなんだろう。お母さんがいるってどんな感じだろう。
 家族とか、故郷とか。

 帰りたいとことか。

「なあエレフ、おまえの父さんってどんなやつだった?」
「父さん? ……優しかったよ。強くて、何でもできて。よく鹿を射ってきてくれた。母さんのシチューのために」
「ふうん……」
「あ、でも、ざりがには苦手だったんだ。オレとミーシャがいっぱいざりがにを取ってきてゆでてもらったときだけはさ、外に出て気持ち悪そうな顔してた。美味しいのにな、ざりがに」
「うん、だよな。オレはざりがによりも普通のカニのがよく食べたけど」
「そのうち家に帰ったら、もっと美味しいざりがにを取ってきて父さんに食べさせてやるんだ。オレの好物だもん。自分にも嫌いなものがあるのに、オレには好き嫌いしちゃだめっていうのはずるいと思う」
「そっか」
「オリオン?」
「……なあエレフ、お前がうちに帰るときってさ、オレも一緒にいっていい?」

 金の髪のオリオンがそれを知るときこそが、運命と出会うべきときだったということを、幼い彼らには、知るすべもなかった。
 
 打ちつける波、白い泡、波しぶき、波、打ち寄せる泡、苦い潮の味。

 おうちってどんな感じだろう。

 おとうさんとおかあさんって?

 かえりたいってどんなきぶんなんだろう。

 なつかしいって、いったいどんな。


 
 そして全てを断ち切るように、凛、と風切る弓の音。 
 
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