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薄暮都市

同人・女性向けの話題専用のブログ ジャンルはよろず。遊戯王・DFF・バサラなど。 ときどき、アイマスや東方などの話も混じりますのでご了承の程を。

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  • 05/15/06:26

サイト運営再開できるようになったー!

忍者サーバーがちょっと設定を変えて以来、バカになったままだったFTPの設定をようやく整備いたしました。
これでサイトの変更が出来るようになったお!
上の広告も消せましたし、これで更新しようとおもったら出来るようになったのかな? 
ともかくちょっと安心いたしました。
サイトから失踪しているあいだ、自分は主に某ツクールゲーwikiでのSS書きをやっていたのですが、そこで投稿したSSをこちらのサイトに保管しようかなーと今考えております。なにしろ、ニコニコRPGwikiでもトラブルが発生したしねえ。書いたものはいちおう取っておく主義でございます。

しかし、今回どうしても解せないことがひとつ判明いたしました。
……いつ作ったのか、自分でも覚えてないアドレスがある……
「えっ?これ何サイトだっけ?」と思ってトップページを開けてみたのですが、どうやら検索避けをかけているようで、どこから中身を見ればいいのかも分からずじまいです。
うpロダとして使う用に取得したアドレスなのか、URL請求製の裏のためのアドレスなのか。
何があるのか考えるだけでもちょっと怖い…

そして、友人ギリスケ嬢が、どんどんバサラに嵌っていく件について。
釣られて私もわりとバサラってるので、近いうちに合同企画のページなどを立ち上げることになるかもしれません。ちょっと変わった設定のパラレルを書いていますので、それをまとめておきたい的な感じでしょうか。
なにかギリスケ嬢は彼女にしては珍しい破廉恥な方向性でバサラにハマっているので、
二人で電話でいろいろと話しているたびに「この変態!」「破廉恥!」「エロ魔人!」とお互いに罵倒しあう心温まる関係が成立しております。
まぁ今現在進行形でバサラの裏とか書かされているわけですが… どうしたもんだか。モノがあまりにマニアックすぎてどこに出せばいいのかわからない。

とまれ、サイトについてはまた続報があると思われます。どうかのんびりとお待ちくださいませ~


【花を摘む人】(浅井夫妻・ほのぼの)


 


 花を摘み、微笑む人の俤(おもかげ)が、春の日のどこかにこごっている。


 市は、花が好きなのに、摘まれた花を嫌っている。
 部屋に戻り、庭の隅にすわっている後姿を見つけて、ためいきをひとつ。長政が後ろから声をかけてやっと、市は、驚いたようにふりかえる。
「そのようなところにいて…… 虫に刺されるぞ」
「長政さま?」
 艶やかな黒髪、雪白の肌。長政が近づくと、あわてて立ち上がろうとした市がよろめく。強引に腕を掴んで立ち上がらせてやる。市は慌てて眼を伏せ、「ごめんなさい」とか細く呟いた。
「何故そこで卑屈になる必要がある」
「だって……」
「まぁいい。何を見ていた?」
「はい。……あそこ」
 指を指す。そこに、一輪の花が咲いている。長政には花の名などわからない。薄紫色の、あれは、菊の類だろうか。
「きれいよね? ……三日も前から、ずっと、みていたの。もうすぐ咲くと思ったから」
「なるほど、な」
 花を見るよりも、つい、花のことをたどたどしく話し、うれしそうに微笑む妻の笑顔を見てしまう。長政はそんな自分に気付いてすぐに、慌てて市の顔から目をそらした。不思議そうにまたたく目が、また、こちらの罪悪感をそそるほどにあどけない。
「あの花が好きか、市」
「うん……」
「ならば、茶坊主にでも言いつけて、床の間にいけさせるか」
 長政は何気なく言ったつもりだった。けれど。
「だめ!」
 思いのほか、強い口調で言い返されて、驚いてしまう。
「……あっ」
「何だ、急に大声など出して」
「……ごめんなさい」
「ごめんなさい、では何が言いたいのか分からぬぞ」
 市は眼を伏せた。長い長いまつげが表情を隠してしまう。泣き出しそうな顔は、悲しいことに見慣れすぎたものだ。市はそっと長政の傍を離れると、不安がった子どものように手を組み合わせる。無意識にだろう、爪を弾く。ぱちん、ぱちん。
「あの…… ごめんなさい、長政さま。せっかく市のこと考えてくれたのに…… 大声だして」
「お前の声なぞ、大声のうちに入らん」
 あきれ返りながらも、長政は、光の中に己が愛しい娘の姿を見る。
 光に照らされるぬばたまの髪。白い頬。野いちごのようなくちびるの、今にも泣き出しそうに潤んだひとみの。
「長政さま。市ね…… 折った花は、きらいなの」
 どうして、この娘は、すぐに泣きそうな顔をするのだろう。
「だって、花も、死ぬでしょう? ……ただきれいに咲いているのに、それだけで殺されてしまうなんて。……市のせいで、花を死なせてしまうのは、可哀相……」
 たかが三日で、さもなくば一昼夜で枯れ落ちるように生まれたもののために、どうしてこんな風に、泣くのだろう。
 ―――長政は大きく息を吸い、そして、吐き出した。
「そうか。ならば、毛氈をもってこさせるか」
「長政、さま……?」
「これも、同じ花なのではないか? たぶんこれも、これも」
 長政はぶっきらぼうに、藪に背を伸ばした花を指差す。長政には花の名などわからない。半ば照れ隠しの乱暴な手つきだった。
「長政さま? それ、お花じゃないよ……?」
「し、知るか。同じようなものだろうが」
 市は、目をまるく開く。
 長政を見上げる。その、真っ黒な眼で。
「ここに毛氈を敷き、茶の用意をさせよう。そうすれば、石の上にそのように膝などつかずとも、花を見ることができるだろうが。不調法は悪だ!」
 乱暴に怒鳴りつける。市の表情がほころぶ。
「お前も、浅井の正室という自覚があるなら、もうすこしはあたりを気遣って振舞え!」
「……はい、長政さま」

 
 花を摘み、微笑む人の俤を、春の日のどこかに見ることがある。
 よく見れば、それは自分だ。摘んだ花をいとけない幼子へと手渡す自分だ。幼子は笑う。まだ乳歯のそろいきらない口で。その顔は、どこか、愛しい人にも似ている。あなたは、長政さまに似ているね。そういって髪を撫でる。つやつやと手触りのいい黒髪。

 あれは未来? それとも、夢?


 うららかな春の日に、庭に毛氈を敷いて茶を汲むという話になり、気付けば人がぽつぽつと集まってくる。火鉢に鉄瓶がかけられ、あられや餅が高杯に盛られる。市の指差す花を見て、あらこのような、と驚く娘がおり、ままごとのようですね、と懐かしそうに笑う老婆がいる。
 この場所はあったかい。みんな、市にやさしい。長政さまのおかげ。
 市が眼をやると、長政はどこか苦虫をかみつぶしたような顔をして、まずそうに茶を啜っていた。照れ隠しだとすぐに分かった。さっきまで、笑っていたもの。市が長政さまのほうを見ているって気付くまで。
『あの人はだれかな』
 市は春の日に目を細める。そこにうかぶまぼろしを見定めようとして。
『あなたも、しあわせなの?』
 自分と良く似た人。幼い子どもの手を引き、花を摘む人。しあわせそうな人。
「市、どこを見ている」
 ふいに、声がかけられる。長政だった。振りかえると、少しだけ心配げな顔をしている。虚空をぼうっと見ているだけのように見えたのだろう。
 市は、いつの間にか、笑みを浮かべていた自分に気付く。長政の傍にすこしだけ近づく。指先を伸ばし、衣の裾にそっとふれる。指に触りたかったけれど、まだちょっとだけ、はずかしいから。
『市もね、しあわせだよ』
 花を摘むというだけのことにも怯える自分でも、たった今、こんなにも、あったかい場所にいられる。
 大好きな人の隣だから。
「長政さま」
「どうした」
「ありがとう。市ね…… すごく、うれしいよ」


 春の日の庭の、光の中で。
 花を摘む人の俤(おもかげ)は、今も、幸福な笑みに満たされている。

 


 

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