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薄暮都市

同人・女性向けの話題専用のブログ ジャンルはよろず。遊戯王・DFF・バサラなど。 ときどき、アイマスや東方などの話も混じりますのでご了承の程を。

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  • 05/04/01:13

【赤ノ女戦士】 (ぼかろ関係)


5/9は誕生日でした。拍手でお祝いしてくださった方々、ほんとうにありがとうございます!!
ここ数年、誕生日もへったくれもねーという感じだったんですが、今年はたくさんお祝いをしてもらえて幸せです。今日会った方にはずうっと前から探していた本をわざわざ古本屋で探してきてもらっていて、思わず涙がちょちょぎれそうでした。年を取るのも悪くないんだなと思った一瞬。


ところで最近、スランプになっちゃー2525して自分をごまかしておりましたら、なんだか非常にツボった曲を見つけてしまったので、それにコラボ。
【悪ノ娘】(鏡音リン):http://www.nicovideo.jp/watch/sm2916956
【悪ノ召使】(鏡音レン):http://www.nicovideo.jp/watch/sm3133304
SSは折り返してますので、見たい方はどうぞ。
…そして、私は仕事に戻ろうorz


MEIKO&鏡音レン
【赤ノ女戦士】

(悪ノP、”悪ノ娘””悪ノ召使”にコラボ)


 知らなかったということが、何かの言い訳になるのかしら。
 至高の座に居ます王女様、あなたの細いその首には、国も、王冠も、重すぎる。

 

 彼女は紅き鎧の剣士。だが、彼女が身につけるその彩は、尊い紅の猩々緋でもなければ、臙脂で染め上げたあざやかな紅でもなかった。
 彼女がまとうその鎧、鋼鉄と革の甲冑を染め上げるのは、野山に花咲く茜の色。そしてその剣に輝くは、彼女の故郷の石にして骨、真紅に輝く柘榴石。

 後の世に救世主と呼ばれし女剣士。これは彼女の物語。

 

「隊長、本当に行かれるのですか……?」
「うん。そうね、あたしの郷里はエールが美味いの。そろそろエールの季節だからね、それが理由じゃダメかなあ?」
 一人の女がそう笑いながら、目立たぬ毛織のマントをばさりと払った。身に纏うものは鋼の甲冑と革鎧を組み合わせた軽装な装備。だが、丹念に鋼の輪を編み合わせた鎖かたびらも、使い込まれて深い色彩となった革の具足も、見るものが見れば彼女がいかに己の剣、そして、鎧に対して心を配ってきたとわかるもの。
 その胸からは、もともと刻印されていたはずの、紋章が削り取られている――― 黄金の薔薇抱く獅子の紋章。王都を守る警備隊の分隊のひとつを任された印として、彼女にあたえられていたはずの栄光の紋章が。
 眼下に見下ろせば、灰色の石作りの路が街にまで続く。頭上を仰ぐと空は晴れ、遠くに鳶が鳴いていた。「旅日和だね」と女は笑い、自分よりも頭一つ以上も大きな部下たちを、「心配しなさんな」と力強くねぎらう。
「あたしは、単に新造りのエールを飲みに戻るだけよ。きっとここに戻ってくるわ。あたしたちの町に…… きっとね」
 そして女はあぶみを踏むと、たくましい栗毛にひらりとまたがる。ぶるる、と馬が鼻を鳴らした。女の腰に佩かれた剣、その柄に象嵌された柘榴石が、あざやかな真紅に照り輝く。
「隊長! 自分たちは……っ」
「またね! 楽しみにしてなさいよお、土産に、とっときのエールを持って帰るから!」
 磊落に笑って拍車を蹴りいれ、女は馬を走らせ始めた。白亜の宮殿を後にして、女は、王国一の猛者の名も高い女戦士は、己が主であったはずの王宮を後にした。
 堀にかけられた橋が上げられ、女の後ろで、があん、と音を立てて跳ね上げ扉が締まる。女の顔から笑みが消え、代わりに、射るような鋭い光が宿った。女はたずなをひき、馬を止まらせた。栗色の断髪をはらい、背後を振り返る。白亜に聳え立つ尖塔と、今は薔薇がさく盛りの庭園。毎夜毎夜のように舞踏会が開かれて、ピスタチオやアーモンドの菓子、溢れるほどに供されるワインを代わりにそそげば、深い堀すら葡萄酒で充たすことが出来る。
 くっ、と女は唇を噛んだ。馬の首を街へと向けようとする。
 だが、そのとき、ふいに気付く。
 一人の少年が、一本の樫の下に立っている。
「……レン?」
「メイコさん」
 女は馬をなだめながら、ゆっくりと少年へと近づいた。それは、王女の傍仕えのものの証である、緑の生地に黄金のふちどりが施されたお仕着せ。金の髪でふちどられた白皙に、宝石のような緑の眼を持つ少年だった。
 レン、と呼ばれた少年は、半ば泣きそうな顔をしていた。メイコは思わず破顔する。身も軽く馬から下りると、少年の正面に立った。
「あなたが、王宮警備隊を辞したという話は、ほんとうなんですか」
「ええ、半分くらいね。もう半分はわたしのわがままよ。急に、郷里のエールが恋しくなっちゃってね」
 いたずらっぽく答える女を、少年は、その真意を見抜こうとするかのように見つめる。二つの目は透き通る緑、海柱石の緑だ。少年はためらいがちに手を伸ばし、馬のあぶみを取る。「僕が外まで送りましょう」と言った。
「あら、悪いわね。王女殿下のお相手はいいの?」
「殿下は今、午睡をなさっているお時間ですから。先刻の仮面舞踏会でお疲れなのでしょう」
「だったら、なおさら、傍にいてあげないといけないんじゃない?」
 あなたがいなかったら、きっとぐずるわよ、あの子、と女は言う。少年は口を結んで答えなかった。女は大きく顔を挙げ、天を仰いだ。
「いーい陽気でしょう、レン。今年は麦日和が続いているわ。ライ麦もオーツ麦も、どこの蔵にだって溢れちゃうくらいの豊作でしょうね」
「そう…… ですね」
「なのに、王都付きの騎兵の一団が、リンツ属州へと派遣された。なんのためだと思う?」
 ふいに、女の目線が鋭くなる。少年は黙り込んだ。石畳にひづめの音だけが響く。
「―――リンツの農作地から、主に土地を持たない農民たちが逃げ出してるの。税が安くなるって話に誘われてね。どんだけ豊作でも、秋の嵐が来る前に収穫しないと、麦はすべてダメになるわ。このままじゃリンツ州伯は、ことしの税を払いきれないでしょう」
「そんな愚かな政治をする州伯が無能だ、ってことじゃないんですか?」
「さあね、あたしは剣を振り回すのが仕事だから、そんな細かいことは分からないわ。でも、街の噂は知ってる」
 曰く――― この国を滅ぼそうとしているのは、一人の、愚かで邪悪な娘。
 咲き初める黄薔薇さながらに美しい、芳年14になられる王女陛下。彼女の乱費と気まぐれが、国を荒らし、この国を滅びへと導かんとしているのだと。
「でもねー、あたし、どうもこの話っておかしいと思うのよ」
 口調は暢気だが、女の目は痛いほどに真剣だった。彼女の側で馬を引く少年には、言葉も無い。
「お姫様一人がどれだけ贅沢をしたって、出費は知れてるわ。彼女が何を欲しがってるって言うの。絹のドレス? 華奢なアラビア馬? めずらしくて高価な薔薇と、毎日三時に美味しいお菓子?」
 そんなものがどれだけするっていうのよ。女は、くすっ、と笑いを漏らす。少年は、たまりかねたように言う。
「メイコさん、それ以上は、閣下への不敬とみなされます」
「だから、なんなのよ。あたしはもうこの国の軍人じゃなくなったんだから」
 彼女の気安い返事に、少年は、ハッと振り返った。
 女は笑い、その腰に佩いた柘榴石の剣を軽く叩いて見せた。小さく音がした。剣帯の金具が立てる音。
「もう、あたしの家は貴族じゃないし、あたし自身がこの国の軍人ってわけでもない。もう、自由だわ。何をしようが言おうが、わたしは何にも困らないってわけ。減給するための給料も貰ってないんだもん」
「メイコさん……」
 彼女は柘榴石の細剣を、ふいに、抜き放った。銀の刃がすらりと弧を描く。いっそ優雅なその仕草。だが、その振る舞いに対する少年の反応に、彼女は思わず笑みこぼれる。
「いい動きね、レン。あんたは教え甲斐のあるいい生徒だった」
 とっさに半身になり、メイコの剣を受け流そうとする仕草をみせていたことに気付き、レンは、慌てたように「すいません!」と謝る。
「あやまることないわよ。と、いうか、あんたがぼうっと突っ立ってたら、剣の平でお尻をひっぱたいてるとこだったわ」
 メイコは柘榴石の剣を腰の鞘に戻した。そして、その眸で、ひた、とレンの双眸を見据える。うつくしい青緑。海柱石の緑。
「ねえ――― レン。これって、あたしの想像なんだけどね」
 彼女は、ゆっくりと眼を上げた。頭上には空。青く晴れ渡った秋の初めの空。
「どうして、この国の王座に居ますのは、王女閣下なのかしら?」
「……」
「たった、14歳の女の子。生まれたときから回り中のみんなにちやほやされて、城からほとんど出たこともない。そんな女の子が、どうやっていい王様になれるっていうのよ。毎晩毎晩舞踏会をして、歌劇を見て、カードゲームをして。そんな暮らし、オルゴール箱の中の人形とおんなじじゃない。なのに、みんなは、この国を荒廃させたのは王女だと信じて……」
「もう、やめて、ください」
 レンが、ふいに、半ば搾り出すような声を上げる。メイコは振り返り、しずかに、己の弟子でもある少年を見つめる。
 王女の傍仕えである少年。王女に良く似た黄金の髪、海柱石のひとみの少年。彼は硬く手を握り締め、苦しそうに言う。
「王女殿下は、この国の至尊の座にいらっしゃる方。侮辱は、けっして、ゆるされないんです」
 しばらく静かに少年を見つめていた女は、やがて、そっと眼を伏せた。手を伸ばし、硬くにぎりしめられていた指を、一本づつ解いてやる。白くて華奢なのに、その指の付け根ごとが、剣を握るために硬くなっている手の平。
「これは、あたしの、ただの想像だけどね」
 女は静かに言った。
「もしも、先王閣下が亡くなったとき、この国に残されたのが王女殿下一人で無かったら…… すべてが変わっていたんじゃないかしら……?」
 もしも、たったひとりの女子が、王女としてこの国を継ぐのでなければ。
 その兄、あるいは弟として男子がいて、彼が王位を継ぎ、姻戚としてたとえば隣国の王と同盟を結べたなら。
 その少年が聡明で、奸臣どもの跋扈する王宮を正すほどの力を得るまでの日々を、忠実なものたちと共に雌伏して生きることが出来たなら。
 この国の未来は、今とはまったく異なったものとなっていたのではないだろうか……?
「どう思う、レン。いえ、殿下」
「僕は、ただの召使。王女陛下の傍仕えの身です」
 少年は、半ば悲鳴のような声で、女の言葉をさえぎった。
 二つの眸が、黙り込む女を見上げる。強い光をもった二つの眸。
 ―――王女その人の持つ可憐さに似て、それよりもはるかに強く、だが、どこかしらにあやうい光をひめたひとみ。
 女はしばらく黙ったまま、少年を見上げていた。だが、やがてくすりと笑みを浮かべると、少年の手からあぶみを取る。茜色の外套がひるがえった。馬上の人となった女を、少年は、呆然と見上げる。
「あたしは、新しいエールをたっぷり楽しんだら、きっとまた、ここに帰ってくるわ」
 陽気な口調でいって、だが、ふいに真剣な顔になる。むしろ、哀しげというべきだったのやもしれぬ。
 女のとび色の目が、強いまなざしが、まっすぐに少年を見た。
「この国は、あたしの故郷、あたしの生まれた場所で、そして、死んだら骨を埋めるべき場所よ」
 今のあたしが忠誠を誓うのは、この空と、そして、大地だけ―――
「もう、あたしは王家に忠誠を誓う身なんかじゃない。だからレン、あんたも、あたしに遠慮なんてしないで、自分が護りたい、殉じたい路だけを信じなさい」
「メイコさん……」
「殿下…… いえ、レン」
 女は瞬間、その手を胸に、削り取られた紋章の上にあてて、瞠目した。王その人の前でのみ許される、忠誠の証。
「あなたに神のご加護があらんことを!」
 そして、女は眼を上げると、にこりと笑った。唇が赤く美しかった。そして、馬の腹に拍車をくれると、女は、軽やかな足取りで、滅び行く街へと続く道を、駆け下りていった。少年はその美しい茜色の姿を、どこか苦しそうな、泣きそうな顔で見送っていた。その姿が消えても、そこへ立ち尽くしていた。鐘楼の鐘が三度時を告げるまでの間、ずっと、ずっと、立ち尽くしていた……

 

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