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ライオンはひとりぼっち(アナザーねたSS)
生まれたときから、人を殺すことが好きでした。
いいえ本当は、生まれたときのことなど憶えておりません。わたしは、何も憶えておりません。とてもありがたいことです。何かを憶えているということは、ほんとうに、辛く哀しいことなのですから。
戦争があるたびに人を殺しました。
誰もがひるみ足をすくませる戦場で、わたしは進んで先陣を切りました。弾も焔も平気でした。わたしの剣はプラスチックでも割るように鋼を割れた。虫の手足をちぎるように、鉄で出来たアーマーの装甲をもいで、中から人を引きずり出しました。血だまりの中で泣きわめき命乞いをするものたちを一寸切りに切り刻みました。あばらを踏みおり、はらわたをちぎり、スイカでも踏み潰すように頭を踏み抜きました。
わたしは、そうすることが、心から好きだったからです。
この世界はひどくいらだたしいところです。ひとが、いないからです。戦争がないと苛々して落ち着きませんでした。心が修羅のように猛るときには、吼え、狂い、人の形をしたものをばらばらに壊しました。なのに血の一滴も見ることが出来ませんでした。怒り狂うわたしをみて、飼い主を名乗る男は、ひどく満足げに哂いました。
この世界には、殺すことができるほんとうの人間は、10人しかいない。
どうしても人殺しがしたいなら、そやつらを狩りたててみるがいい。
殺すことができる人間が居る。わたしが歓喜に震えていたことを、誰か知っていたものはいたのか。どうでもいいのです。わたしが喜んでいることを知っているのは、わたし独りでいい。わたしの心を知っているものはどうせ皆死にました。わたしの記憶も死にました。わたしの心も。
なのにあの男は、わたしと戦いたくないという。争いも死もきらいだという。あんなに強いのに。互角に殺しあえるのに? あの男は聞きました。どうして人を殺すのと。
「お前はどうして、そんなに、人を殺したいんだ?」
「聞いてどうする。命乞いか」
「違うよ。そいつを聞かなきゃ、お前と戦えない」
「理由なんてない。愉しいからに決まってるだろ?」
でも、あの男は本当は気付いていたのかもしれません。
血まみれになったわたしがときどき、自分でも気付かないうちにつぶやいていた言葉が、もしかしたら、真実のもう一つの顔だったのかもしれないって。
「……可哀相なスコール。なぁ、おれ、お前を殺したくないよ?」
「うるさい、黙れ」
「おれは、そんなに簡単に死なないよ。死体にならなくたって、お前を」
「黙れッ!」
わたしは人を殺すことが好きなのです、とてもとても。
何故なら、人の血に、肉に、はらわたにまみれることが、とても好きなのですから。
何故ならそうやってさわってみたとき、
にんげんというものは、
とても、あったかいものな
のですか
ら。
*********
すいませんずっと忙しくて何もかけてないねんな(´・ω・`)
アナザーでばっちゅさんジタンと来たので次はライオンさん。
うちのアナスコはさみしがりやの戦争狂。
スコバツ+アナザー+アンデット=筋肉少女帯の”再殺部隊”
とってもグロテスク表現を含みます。ご注意ください。
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あのね
あたしたち好きなひとに
もういちど会うため 歩いただけよ
はぁ、はぁ、はぁ、と、自分の息がやたらと耳についてうるさい。
それが、過剰なまでに張り巡らされた神経のせいだと、フリオニールは冷静に理解していた。胸から肩にかけての筋肉。鎖骨から肩甲骨にかけての構造。その動きがまるで、きつく張られたフィドルの弦のように思える。息が触れただけでもふるえるほどに研ぎ澄まされた構造。
「ティーダ」
「だいじょ…… 大丈夫ッス。もう血、止まったみたいだ」
大きな岩塊の影に隠れた少年は、泣き出しそうに震える声をしていた。だが、きちんと冷静でいる。状態も把握している。フリオニールは視線を動かさないままで、気配だけで背後の様子をさぐる。
うずくまって得物を手にしたティーダは、すぐかたわらの青年を背中でかばっている。青年というのは正確じゃない。本当はティーダよりも半年ほど歳若い少年だ。だが、彼を”少年”だと思ったのは、この、今日の太陽が昇るのを見たときがはじめてだったと思う。
満足な回復も出来ず、真っ青な顔をして、血みどろになっていた少年。
不器用な、孤独癖のあるスコール。
「……! フリオ!」
ティーダが短く声を上げた。フリオニールはとっさに振り返った。
「スコール、目ぇ醒めたッスか? 大丈夫か!?」
瑠璃色の目を薄く開いて、ティーダを見、それから、フリオニールのほうを見た。スコールはかすかに唇を開いた。何かを言おうとして、咳き込んだ。無事だ。フリオニールは安堵のあまり全身の力が抜けそうになるのを感じる。だが。
鋭い閃光が、轟音と共に、弾け飛ぶ。
「ッあ!?」
ばらばらと音を立てて、石の欠片が降ってくる。見つかってしまった! フリオニールはとっさに弓を掴んでいた。裂けんばかりに目を見開くスコールを、ティーダが、短い悲鳴と共に押さえつけた。全身でかばうように覆いかぶさる。こちらを一瞬だけ見る。海藍の双眸。
「引きつける。デジョントラップで逃げろ!」
「わ、分かった。フリオ、絶対に後でまた!」
何かを言いかけた声を無視して、フリオニールは岩陰から飛び出した。とたん、目の前に広がるのは真珠母と黒曜の夜の闇。広大な月の砂漠。
「ッ!」
こちらの視界に捕らえるよりも先に、凄まじい水流が踝下から吹き上げる。水が剃刀のように腕を、肩を、切る。鮮血が散る。次が来る! とっさに弓を捨て、盾を掴む。音を立ててバックラーが剣を弾いた。
目の前に青年が居た。白い髪、象牙の肌。瞳は燃える熾火。力任せに盾に食い込んだ剣を跳ね返し、ついで、全身の力を込めて岩場の上から弾き飛ばす。寸暇もあけずフリオニールもまた跳んだ。力任せの一撃。
「ッ、きっついねえ…!」
軽口を叩くのが遠く聞こえた。だが、答える余裕などはじめから無かった。油断をすれば、間違いなく、《取られる》。とっさに横に転がる。足元に神聖なる光が炸裂する。痛みが逆に意識を研ぎ澄ましてくれる。フリオニールは弓を取る。引く。
「当たれッ!!」
音をたてて、短矢が飛んだ。
もうティーダは逃げただろうか。スコールを連れて、ちゃんと距離をとるまでどれだけ時間がかかるのか。歯を食いしばって必至で頭を回転させる。そうやっていないと、気が狂ってしまいそうだった。
「はは、速っえ、鬼さんこちら! ハハッ!!」
左右に素早く飛び退り、矢を裂け、詠唱の光を蛍火のように散らす。短いマントが翻る。そのたびに紅がひらめく。柘榴のような鮮やかな色が。
片腕がもげていた。
傷がわき腹を抉り取って、あばらが白く、笑みこぼれる歯のようだった。
悪夢だ――― とフリオニールは思う。あんな状態で生きられる人間なんていない。なのに、あいつは”動いている”。ならば、あいつはもう、自分たちの仲間じゃない。魔力で操られるただの人形だ。”死にぞこない”なんだ。
「止まれぇ!!」
フリオニールは、搾り出すように、悲鳴を上げていた。指が弦を弾いた。鈍い音。フリオニールは思わず、引きつるように、息を止めた。
青年はつきとばされたように倒れた。一瞬、動かなかった。目の前が真っ白になりかけた。だが。
「あぁ、もう」
彼はすぐに、再び、上半身を起こしてくる。
きょとんとした目でこちらをみて、すこし、眉を寄せた。困ったような顔だった。そして無造作に、突き刺さっていた矢を引き抜いた。無造作に投げ捨てる。血まみれになったボールのようなものを、串刺しにしたままで。
「なんで、そこまで、邪魔するんだよ」
彼は、”バッツ”は、こまったように言う。小首をかしげて。もう、片目の、なくなってしまった顔で。
悪夢だ。こんなの、悪い夢だ。息をしようとすると、かすれた喘ぎが漏れた。
「どうして、なんだ……」
バッツが目をまたたく。生きた人間にはとうてい不可能なほど、”破壊された”姿。
「どうして、死んで、くれないんだ……!!」
どんな姿になっても、仲間なのに。大切な人たちの一人のはずなのに。死した後も切り刻み、その命を冒涜するような行いなど、夢にも見たくなかったほどなのに。
フリオニールは、泣きながら手斧を取る。”バッツ”は、言われている意味がどうしても分からない、とでもいうように、あいまいな微笑で首をかしげていた。空になった眼窩から、頬を流れる固まりかけた血。
「あのさ、フリオニール、おれね」
抉り取られた胸の中で、あばらのつくる鳥かごの中で、今も音を立てて動く機構。
「もう一度でいいから、スコールに会うために、こうやって起き上がっただけだよ」
心臓のかわりに埋め込まれた時計が、ちいさな鐘を鳴らす。バッツは片方だけの腕を翻る。特徴的なかたちのあの剣が呼び出される。銃の機構をそなえた大剣を。
「ぜんぜん、哀しいことじゃないんだぜ。なぁ?」
バッツはこりと笑って剣をかまえた。左胸の中で時計が、オルゴールの音色で時を告げ始める。
フリオニールは、吼えるように声を上げた。絶叫は、絶望に似ていた。
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時計ってからにはミシアさんのアレコレとかそういう…(ホラー)
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