NEW ENTRY
(07/14)
(07/12)
(07/02)
(06/28)
(06/27)
[PR]
脱☆稿
某テキストがようやく脱稿しましたやったー!
とりあえずまだ第一稿だからどんどん校正とか修正をいれなきゃいけないけど、ひとまずこっから先の仕事は修正がメイン。そんなに忙しくも大変でもないです。
そして、そのテキスト書きながら、ちまちまとロタティオン下巻の原稿を書き溜めてます。
なんかね、小説を書いてたまった疲れは小説を書いて発散という… なんぞこれー。でも、書いてて幸せな気持ちになれる小説ってのは、いい小説だよなぁと自分は思ってます。
何か散漫で、淡々としてて、でもあったかい、そういう感じの作品に仕上がりそうだな、と思ってます。
以下ちょっとだけお蔵だし。
25才スコール×17才ばっちゅさんの同人誌、
『ロタティオン』の続きをちょっとだけ。
*****************
バッツは、今、上手に歩くことができない。
あちらこちらの『駅』で鳥を借り、あるいは乗り合いの馬車を利用しながら、二人は普通の半分ほどにもゆっくりとしたペースで旅を続けていた。タイクーンには、優秀な医師である白魔導士がいるという。バンディリア旅行団の団長に書いてもらった紹介状を片手に、その白魔導士にバッツの治療を頼みに行くのが今回の目標だ。
暖炉に入れた火がようやく部屋を暖めてくれた頃、旅籠の娘があたためたワイン、それにスープを持ってきてくれた。まだ上手にスプーンをもてないバッツの代わりに、レオンがその口にスプーンを運んでやった。ワインは二人で分け合う。体が温まる。心が落ち着いてくる。
食事を終えると、バッツは、くぁ、とあくびを漏らした。空色の目がとろんと眠たげになっている。冷水で絞った布を額においてやると、気持ちがよさそうに目を細めた。
「もう寝たほうがいいな、今日は」
「うん。そうする。……レオンは?」
窓の外を一瞥する。まだ、灰色のままの、夜になりきらない空。
「お前が寝たら、出かける用事があるな」
「なら、おれが寝るまでここにいてくれる?」
「ああ」
ベッドの傍らに座っているレオンのほうへ、おずおずと手が伸びてくる。レオンは目を瞬く。動かない、壊れた手。
「……れおん」
たどたどしい口調。
「一緒に、寝て、くれないかなぁ?」
不安が言葉に滲んで、声が震える。レオンは笑みを漏らした。「そんなことか」と額に手を置く。
「聞くまでもないだろう」
「……だめ?」
「その逆だ」
レオンは立ち上がると、羽織っていた分厚い上着に手をかける。暖炉の前に脱ぎ捨てると、首に下げた首飾りがゆれる。見慣れない意匠の銀の飾りが、鎖骨の突起のあいだで光った。バッツは毛布に顎までくるまったまま、レオンのほうを見ていた。逞しい背中、肩の線。全身の皮膚に無数の傷の残る、戦士の体。
毛布をまくって、同じベッドに入ってきてくれる。火薬の匂いがした。それと、火の匂いと、琥珀の匂い。急に肩の力が抜けて、体が楽になる。バッツはおずおずと顔を寄せると、レオンの髪に顔をうずめ、すん、と息を吸った。
「熱があるな……」
レオンは気遣わしげにつぶやく。バッツは少し笑う。
「あったまるだろ?」
「馬鹿なことを言うやつだ」
ひたいをあわせて、吐息を重ねて、ついばむだけのキスをする。レオンは、壊れた体を注意深く抱き寄せてくれる。バッツは大きく息を吐き、全身の力を抜いて、レオンの体に寄り添った。
何を求められるわけでもない。ただ、一つのベットの中で、寄り添いあって眠るだけの夜。そんな夜が、あたたかくて、涙が出そうなくらい嬉しい。声にならないくらい。
外では、みぞれが窓を打つ音。雪解けのころの雨。たくさんのベットがおかれた広い部屋の中で、ひとつ毛布に包まり、寄り添いあって眠る。そんな夜。
いつまでも、夜が続けばいいのに。
引き締まった腕に頭を預けながら、バッツはひそかに、けれど切実に、そう願った。
PR
- トラックバックURLはこちら