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薄暮都市

同人・女性向けの話題専用のブログ ジャンルはよろず。遊戯王・DFF・バサラなど。 ときどき、アイマスや東方などの話も混じりますのでご了承の程を。

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  • 11/21/18:02

ニセモノと天使

ひさしぶりに。




 好き、って何かな。そいつがうまくわからないとおれが言うと、セフィはまじめな顔をして、「私もだ」と答えてくれた。すごくめずらしい、セフィのまじめな顔。でもおれにとってはあまり珍しくない顔。それが、なんとなくうれしくて、かなしくもあって、これが『好き』なのかなぁと考えてみる。やっぱ、わかんねえ。どうにもおれには意味不明の感じ。

 おれはどうやら半分イミテーションで、半分ホンモノの、ようするに正真正銘のニセモノ?というものらしかった。証拠に、おれの頭はどうにもこわれてる。特に感情とかそういう部分がてっていてきにダメで、人間らしいアレコレとかがボロボロ取れる。怒ったり哀しんだり、よくわかんない。だから物覚えもよくない。だって、うれしいとも哀しいとも思わなかったことなんて、ずっと憶えてなんていられないじゃん。

 半分人間で、半分は宙のイキモノで出来てるセフィは、おれとおんなじニセモノだ。つまり天使。人間のニセモノ。それがものすごく哀しくて、悔しいから、セフィは全力で爪を立てながらいつも生きてる。天使って、猛禽と似てる。猛禽ってタカとかワシのこと。高いところから石みたいにおっこってきて、小鳥なんかを掴み殺して飛んでいくんだ。天使の爪は、鋭い。セフィはその爪を研いで、この世界をきりさきながら、縋りつきつづけている。悲鳴みたいに笑いながら。

 そういうイキモノだから、おれはセフィが好き。可愛くて可哀相で、哀しくてカッコいい。たまに抱きついてぎゅうとしていたくなったり、もっと即物的に交尾とかしてみたくなったりする。でも別の時にはそばにいたくなくなったりもする。そのくせあんまり遠くまで逃げると、セフィが心配になって振り返って、やっぱりまた戻ってきてしまう。こういうのが、好き、なんだろうか。間違ってない、かなあ?

 おれはニセモノだけど、だからといって別のモノになりたいとは思わない。正確には、「もう」思わない。一度か二度、人間にもどしてやると言われたことがあった気もするけど、思い出せないや。別になんとも思わなかったんだろうな。でも今はすごくはっきり、「人間にはなりたくない」と思う。おれは、ニセモノがいいな。この箱庭の世界の失敗作。それで、たったひとりの、セフィのともだち。

 ニセモノじゃなかったら、セフィのこと、こんな風に追いかけたりしなかったと思うよ。黒い羽のかわいそうな鳥。走って走って、見失っては転んで、また走って。痛い目にあうたび忘れたから、あんたのこと嫌いにならないですんだ。人間のことなんてわからないから、あんたが間違ってるとも思わなかった。で、今おれは、隣にいる。セフィのとなり、黒い鳥の隣に。

(続く)
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