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重力の虹【589・メモ】
以前妄想していたSTG風でSFっぽいパラレル妄想。
戦闘妖精・雪風? みたいな…?
お喋りする戦闘機というのはロマンだと思いますよ。
あと、亜光速で宇宙を飛ぶと、まわりの星の光がいろんな要因で「虹の環」のように見えるんじゃないか…というのはけっこう科学的な話らしいです。
スターボウ(星虹)で検索するとコラムが出るよ。ただ私には半分も意味がわからないのですが…(´・ω・`)
青空は青いものだと思っていた。
夜空は暗いものだと思っていた。
当たり前のことだと思うこともなく、愚直にそう信じていた。
「……夕暮れ?」
「そう、夕焼け。オレとしては見るのもイヤだっていうアレな。でもバッツは違うらしいよ」
だから屋上にいるらしいぜ、と彼は言った。
「まぁ、そこらへんがバッツらしいんだけどな。先に言っとくけど、そういう奴なんだ」
言って肩をすくめる。小柄な少年。ハニーブロンドに白い肌、青緑色の目はまるで童話に出てくる王子様のようなものだけれど、隣を歩くスコールは困惑するしかない。頭の中で散乱する思考。
緊張のせいだろうか。たぶん、まだ会ってから10分もたってないせいだろう。
自分のこれからの【きょうだい】である彼に、【9番目の子ども】である彼に。
(……同じペイント)
隣を歩く少年の…… ジタンのうなじが、ときおりちらちらと視線に入ってくる。無造作に脱いだジャケットを腰にくくりつけているジタンは、上半身は黒っぽいシャツ一枚というラフな格好をしていた。だからくくった髪の向こうにちらちらと襟首が見え隠れする。そこにプリントされているナンバーと、虹色の細い線で刻み込まれた認識票。
(俺と同じナンバーだ)
スコールは無意識に何度も、自分の襟首の辺りを手でこすっていた。ちらりと視線を走らせるジタンは、そんな様子に気づいているのかいないのか。
「他のナンバーは?」
「WoLとフリオは哨戒、ティナは調整、タマネギはそっちにくっついてってるし、セシルは出向してるんじゃないかな」
「正確に把握していないのか」
出来る限り事務的な口調で言う。すると、ジタンは急に立ち止まるものだから、スコールはみぞおちのあたりにあやうく頭をぶつけそうになった。むっとして見下ろそうとすると、アクアマリンのひとみと視線がぶつかる。はっと息を呑む。笑う。強い視線。
「正確に把握?」
それをオレに言うわけ? ジタンはニッと笑ってみせる。
「なんだったら、三次元座標に予想最短ルートに戦力マップくっつけて教えてやろうか? 99.9999精度までなら保障しちゃうけど」
顎をそびやかしていう返事に、スコールは一瞬、返答を失う。
「情報型なめんなよ、《兄》さん?」
きらめく二つの目には、はっきりと挑戦的な色が浮かんでいた。
あきらかに冗談まじりの口調だけれど、彼にはそれが《出来る》のだとわかったから、返事に迷った。確かに彼は、《九番目》は、多くのインターフェースに対する適応とそれを捌ききれるだけの桁外れの計算資源を特徴としている。が、それはこんな場所で、軽口のように聞けるような内容なのだろうか? それでいいのか?
「……何の話だ」
結局スコールはぎこちなく答えて、ジタンの隣を通り過ぎた。ヒュウ、というあきれたような口笛が背中から聞こえた。
「《八番目》は堅物だって聞いてたけど、本当らしいな」
オレはその反省結果ってことね、なるほど。
相変わらず軽口ばかり叩いているジタンは、けれど、実際はカケラも笑ってもいないし、面白がってもいないということを、スコールははっきりと理解している。
彼らのシリーズ。
九人の子どもたち。
人間の形をしている《きょうだい》は四人、そうではないのが四人、どちらでもないのが一人。
KosMosシリーズと呼ばれる彼らは、実際のところは【血のつながり】など持たない。それどころか人間らしい血肉すら持たないもののほうが数が多い。
情報としてそのことを知っていたスコールだったけれど、実際に《きょうだいたち》の姿を眼にしたことは一度も無かった。彼らのシリーズの中では、スコールは一番、【人間としての部分】が多いからだ。今までは人の間で育てられ、軍人とはいえ人と共に育ち、そして、人らしい不安と葛藤の中で暮らしてきていた。
だが、そんな不安とも葛藤も、今日を持って【強制終了】させられる。
そう、何故なら、今日から彼は、【人間】ではないのだから。
人間としての人生が終わる。そして、戦争が始まる。
「バッツー、お客さんっ!」
陽気に声を上げて、ドアの向こうへと踏み出す。ジタンの前で開いたドアが、スコールの後ろで勝手に閉まる。立ち入り禁止のマークを見て、遅まきながら、それが《普通では開かないドア》だとスコールは気付いた。手も触れずにあけた? ――そうだろう。情報戦特化の《九番目》なら簡単なことだ。
「バッツ、こちら《八番目》」
「おいおい、《八番目》はないだろ」
唐突に、ヘンな方角から声が降ってきて、スコールはまたぎょっとする。とっさに耳に手を当てた。耳の中から声が聞こえた気がしたのだ。そして、気のせいではないのだと、二言目で正確に理解する。屋上の手すりによりかかって、こちらにむかってひらひらと手を振っている若い整備兵がいる。
「はじめまして、スコール。おれ、バッツ」
スコールは思わず立ちすくむ。今日は何度目だろう? そこに立っているのはどこにでもいるような若い整備兵だった。空色のつなぎを肌脱ぎにして、腰の辺りでズボンのように結わえている。白いTシャツ。短い茶色の髪と同じ色の目。
「……あんたが、誰、だって?」
「ん?」
目をまたたく。くりくりした丸くて大きな目。
「だからおれはバッツ。お前はスコール、だよな? ちゃんと上から話は聞いてるけど」
「だから……」
「違うってバッツ。《八番目》くんは、お前のことそういう格好だなんて聞いてないんだから」
ジタンが間に割り込んでくる。それを聞いてようやく理解したらしい。「あぁ」と声を漏らして、目を細めた。笑ったらしいと一拍たって理解した。
「そうか、初対面だもんな。じゃあ名乗りなおすな。俺は《五番目》、愛称はバッツで通ってる。そうしてあれが―――」
バッツは手を伸ばす。目の前には飛行場がある。舗装された地面はどこまでも広がり、稜線を示すようにかすかにまたたく標識等が光の線を描く。暮れていく空を背景に一機の戦闘機が【バリスタ】の上に設置されている。やや小型の戦闘機。キャノピーが無い。チチ、と翼端の明かりが瞬く。バッツは笑う。自慢げに。
「あれが、”おれ”」
スコールには見えた。ノーズペイントの細いマーク。今も発信されている認識番号。全てが合致している。
KosMosシリーズ、最大の行動範囲を持つ軍用偵察機。
人間の形をしていない、彼らの【きょうだい】……
「たぶん、これからはスコールに乗ってもらうこともあると思うぜ。どうぞよろしく」
屈託なく笑う”バッツ”へと視線を戻し、思わず照合をかけ、スコールはようやく理解した。
たった今、目の前にいるこの青年は、あくまでただのインターフェースに過ぎず……
……あの、どこまでも宇宙を飛ぶための形をしたものこそが、己の、あたらしい【きょうだい】なのだ、と。
**************
KosMosというとゼノシリーズっぽいですね!(´・ω・`)
イメージとしてはライトさん・セシル・バッツ・ティナの四人が戦闘機の形状で、フリオ・たまちゃん・スコール・ジタンが人間型。クラウドはどっちでもない、という感じでした。
運用困難なレベルの不安定さが問題になったNo7クラウドの反省に基づき、開発コンセプト段階で「人間性」に重きを置いたのがNo8スコール。それで、そこをさらに発展させたのがもうすこし性能を向上させた後継機のNo9ジタン。
バッツはあくまで戦闘機であって、人間型の”バッツ”は情報収集用のお人形で幻影だというイメージ。
だから内耳に直接声が響くのです。実際には”バッツ”は直接発声する機能を持ってないので。
そんな妄想だよ!
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